WWEヴィンテージ・コレクション #7
1986年10月 マジソン・スクエア・ガーデン定期戦より
ジム“ジ・アンビル”ナイドハート vs ダイナマイト・キッド w/z マチルダ(犬)
「爆弾小僧」ことダイナマイト・キッド。シングルプレーヤーとしては、なんといっても初代タイガーマスクのデビュー戦の相手にして最大のライバルとして知られています。ワールド・レスリング・フェデレーションや全日本プロレスでは、デイビーボーイ・スミスとのタッグチーム「ブリティッシュ・ブルドッグス」として活躍しました。そのチーム名から、ブルドッグ「マチルダ」を連れて入場していました(透明犬ミケーレみたいなインチキではありません)。小柄だったこともあり、アメリカではタッグでの活動が中心でした。
体格差を埋める為にステロイドを過剰に使用し、今ではその後遺症で体がボロボロになっています。それでも生きているだけまだましといえるかもしれません。パートナーのスミスはおそらくステロイドの副作用で亡くなりました。
そして、キッドのファイトスタイルはクリス・ベノワに受け継がれました。
…なんだか暗い話にしか進みそうにないのでこの辺で。
○キッド(後方回転エビ固めによるピンフォール)ナイドハート×
アイアン・シーク vs ジャック・ルージョー
アイアン・シークは中東キャラでしたが、本当にイラン出身です。イラン革命後に悪役として大ブレイクし、一時はボブ・バックランドを破ってワールド・レスリング・フェデレーション王者にまでなりました。王座は短期間でハルク・ホーガンに奪われるのですが、大ヒールのシークに勝ったということがホーガンを一気にアメリカンヒーローに押し上げたという面もあります。レッスルマニア(I)の頃はソ連キャラ(亡命ロシア人らしい)のニコライ・ボルコフと反米同盟を組み、タッグ王座を獲得しました。ソ連とイラクの国旗を振り回し、ボルコフに至っては試合前にソ連国家を歌うのですから、その嫌われようは半端ではありませんでした。
その後一旦ワールド・レスリング・フェデレーションを離れるのですが、湾岸戦争後、なぜかイラクの「ムスタファ大佐」を名乗って復帰し、かつての抗争相手だったサージェント・スローターや、ジェネラル・アドナンと組んで顰蹙を買っていました。
イ・イ戦争当時にイラン人キャラを前面に押し出したり、その戦争相手の軍人を名乗ったり、ましてや湾岸戦争直後にイラク人を名乗るなんて、並大抵の覚悟で出来ることではありません。まさにプロフェッショナル。
そんなシークですが、今ではレジェンドの一人としてファンから尊敬される存在です。本当のWWEファンは、キャラクタはキャラクタとしてブーイングを飛ばしますが、真のプロフェッショナルへの敬意は忘れません。
それにしても、ジャックに"USA!"チャントが飛ばされるシーンなんて始めて見ました。そもそも、アメリカ人ではなくカナダ人ですよ。そういえば、ヒットマンもヨコズナを相手にした時"USA!"の声が飛んでいました。
…ちょっと待て!アメリカ人にとってはイランもソ連も日本も同じか!とんでもないことに気づいてしまいました。ヨコズナはサモア出身ですが。
○ジャック(ロープ越しのサンセットフリップによるピンフォール)シーク×
グレッグ“ザ・ハンマー”バレンタイン vs デイビーボーイ・スミス
グレッグ・バレンタインは、新日本プロレスに何度か参戦しています。父は“妖鬼”と呼ばれたジョニー・バレインタイン。ジョニー21歳の頃の子供なので、息子のグレッグとの年齢差が小さく、一時はジョニーの弟と称していました。かつてはテッド・デビアスと並んでリック・フレアーのライバル、時期NWA王者といわれていましたが、結局世界のタイトルには手が届きませんでした。
得意技は父親譲りのエルボー攻撃の数々。
デイビーボーイ・スミスは、変わった名前ですが本名です(正確にはデビッド・ボーイ・スミス)。親が出生届を出す際にミドルネーム欄と性別欄を間違えたことからそんな名前になった、とWikipediaに書かれていますが、本当でしょうか?
Davey Boy Smith - Wikipedia, the free encyclopedia
日本ではザ・コブラのデビュー戦の相手「ザ・バンピート」として知られて…はいないですね。すぐマスク脱ぎましたから。コブラの時代にはキッドと並んで新日ジュニアトップ外人として活躍しました。そのジュニア離れした体格は、古舘伊知郎に「筋肉の終着駅」と呼ばれていました。関係ない話ですが、私にも「コブラは外人」と言われて信じているような純真な頃がありました。今やすっかり…
Smith's middle name, Boy, was the result of one of his parents mistaking the name field on Smith's birth certificate for the gender field.
ワールド・レスリング・フェデレーションでは、タッグでも活躍しましたが、シングルでもかなりの活躍を見せました。
英国ウェンブリースタジアムで行われた1992年の「サマースラム」ではメインに出場し、ヒットマンを破ってインターコンチネンタル王座を獲得しました。世界タイトルマッチを差し置いてのメインということで、微妙といえば微妙な評価です。英国興行の看板ではあるものの、世界王座は任せられないということですから。そこで王座を奪われたヒットマンは、その後世界王座を獲得します。
○バレンタイン(ロープ掴み式エビ固めによるピンフォール)スミス×
レイモンド・ルージョー vs ブレット“ヒットマン”ハート
なんだかモントリオールとカルガリーの代理戦争のようです。○ブレット(ロープ足掛け式エビ固めによるピンフォール)レイモンド×
今回こんな決着ばっかり…
5万ドル争奪 タッグチーム・バトルロイヤル
※タッグチームとして出場し、パートナーが敗退したらチームごと失格となる。決着はオーバー・ザ・トップロープ。退場順:
- ムーンドッグス(誰か分からん)
- S.D.ジョーンズ&マイク・ロトンド
- “チーフ”ジェイ・ストロンボー&ゲーターウルフ
- アイアン・シーク&ニコライ・ボルコフ
- (CM中に脱落 ハート・ファウンデーション(ブレット・ハート&ジム・ナイドハート))
- (CM中に脱落 ブリティッシュ・ブルドッグス(ダイナマイト・キッド&デイビーボーイ・スミス)
- キラー・ビーズ(ジム・ブランゼル&ブライアン・ブレアー)
- ルージョー・ブラザーズ(ジャック&レイモンド)
- ドリームチーム(ブルータス・ビーフケーキ&グレッグ・バレンタイン)
- マシンズ(スーパー・マシン?&ビッグ・マシン?自信なし)
- ビッグ・ジョン・スタッド&キングコング・バンディ
- アイランダーズ(タマ&ハク)
○アイランダーズ(バンディのショルダータックル誤爆によるスタッド転落)スタッド×
ムーンドッグスはメンバー交替がモーニング娘。並みに多いので特定できません。
ハクはトンガ出身で、元大相撲の力士です。「福の島」という四股名で活躍しましたが、朝日山部屋のお家騒動に巻き込まれて廃業しました。その後全日本プロレス入りし「プリンス・トンガ」を名乗りました。
ワールド・レスリング・フェデレーション入りした後は「キング・トンガ」を名乗ったものの、トンガ政府に抗議されて「ハク」と改名しました。WCWでは「ミング」を名乗っていました。
ハクはそれなりの体格のはずなのですが、パートナーがアンドレだったり、相手がスタッドだったりするので、このリングではまるで軽量級かのように見えます。リキシと組んだ時はかなり大きく見えていましたが。
しかしアイランダーズでバトルロイヤルに優勝していたとは知らなかった。