WWEヴィンテージコレクション #9

今回は1989年の「サマースラム」から。



ジム・ドゥガン&デモリッション(アックス&スマッシュ) vs アンドレ・ザ・ジャイアント&ツインタワーズ(ビッグ・ボス・マン&アキーム) w/z スリック&ボビー・ヒーナン

アキーム“ジ・アフリカン・ドリーム”は、以前は「ワンマン・ギャング」と名乗っていましたが、後にアフリカ出身の「アキーム」を名乗りました。おそらく「星の王子ニューヨークへ行く」の主人公の名前を採ったものだと思われます。「アフリカの星」の名の通り、背中にはアフリカの地図が描かれています。


※追記:NBAにいたアキーム・オラジュワンが元ネタだそうです。


YouTube - One Man Gang becomes Akeem
YouTube - Akeem Entrance Music
個人的にはこの訳の分からないラッパー風の動きと入場テーマが大好きでした。「レッスルマニアX7」でワンマン・ギャングとして参戦した時、アキームではなかったのでちょっとがっかりしたのですが、どうやら「アキーム時代のコスチュームが痩せて合わなくなった」ことが理由だったようです。
なお、ドゥガンとは第1回「ロイヤルランブル」で最後の二人に残った(ドゥガン勝利)という因縁があります。


レッスルマニアVI」ではツインタワーズが仲間割れし、ボスマンがアキームからピンフォールを奪っています。
アキームはワールド・レスリング・フェデレーション離脱後、WCWに移籍してワンマン・ギャングに名前を戻しました。
佐々木健介に勝利し、US王座を奪取したこともあります。したんだってば。本当は試合していないという主張が一部に見られますが、誰かそれを証明できますか?ギャングの当時の行動を全て把握している人がいるんですか?言い掛かりはやめていただきたい。


それにしてもアンドレの衰えぶりは目を覆いたくなります。トップロープをまたぐだけで精一杯。リングで立っているだけでヨタヨタしています。この頃、既にロープを掴まずにビッグブートを放つことができなくなっていたはずです。


今回驚いたのはデモリッションの大きさ。大型なのは分かっていましたが、今回見たらツインタワーズと遜色ないくらいで、それほど大きかったとは気づいていませんでした。ボスマンは間近で見たことがありますが、ありえないくらいデカいですよ。
スマッシュはボスマン、アキームと連続してボディスラムで投げました。それもよろけることなく、完璧に投げきるという怪力ぶり。そのスマッシュでもそれほど大きくは見えなかったのですから、当時のワールド・レスリング・フェデレーションのレスラーがどれだけ大型揃いだったかが分かります。


○スマッシュ(ドゥガンの角材攻撃からピンフォール)アキーム×


またこれか。どっちがヒールか分からんな。



ハート・ファウンデーション vs ブレーンバスターズ(アーン・アンダーソン&タリー・ブランチャード) w/z ボビー・ヒーナン

タッグマッチの教科書のような試合。典型的というか、古典的というか、基本に忠実で各人がやるべきことを果たしていて、各チームそれぞれベビーフェイス及びヒールのお手本になるような試合運びでした。


○アーン(カバー状態のヒットマンへのダブルアックスハンドルからピンフォールヒットマン×


以前「頭隠して尻隠さず」戦法のことを書きましたが、それはこの試合でした。レッスルマニアVじゃなかったのね。
今回見たらイマイチ笑えなかったのですが、やはりフィニッシュシーンを繰り返しVTRで流してもらわないと面白さが伝わりませんね。



レッド・ルースター vs “ミスター・パーフェクト”カート・ヘニング

なんかもうカートの一人芝居。ヒップトスもドロップキックも美しい。この人のレスリングは芸術品です。
それに比べてルースターのしょっぱいことしょっぱいこと。見せ場なし。
最後は無理やり終わらせた感じです。


○ヘニング(パーフェクト・プレックスによるピンフォール)ルースター×



ミリオンダラー選手権試合 “ミリオンダラーマン”テッド・デビアス w/z バージル vs “スーパーフライ”ジミー・スヌーカ

ハンセンとブロディの代理戦争的な見方をするのは昭和全日ファン。
嫌味な金持ちとポリネシアの野人の闘いと見るのがワールド・レスリング・フェデレーションファン。
なぜなら、これはデビアスが勝手に作った「ミリオンダラー・チャンピオンシップ」のタイトルを賭けた試合だからです。ちなみにこのタイトルを獲得したのは、デビアスの他には仲間割れ後のバージル(黒人の召使)と、リングマスターだった頃のスティーブ・オースチンだけです。


デビアス(カウントアウト)スヌーカ×


試合後、スヌーカがバージルを襲い、スーパーフライを決めました。デビアスは召使を放置して逃走。



ホンキートンク・マン vs “アメリカン・ドリーム”ダスティ・ローデス

デビアスの試合の後にローデスの試合を持ってきたのは、やはり息子の関係でしょうか?テッド・デビアスの息子テッド・デビアス(同じ名前)と、ダスティ・ローデスの息子コーディ・ローデスが現在タッグチームを組んでいます。


ホンキートンク・マンは、エルビス・プレスリーのコスプレ野郎です。
アルティメット・ウォリアーに30秒持たずにフォール負けしたり、ブルーザー・ブロディに16秒でフォール負けしたことによって「弱い」という印象を持たれていますが、実はインターコンチネンタル王座最長防衛記録を持っており(未だに破られていない)、「オールタイムでグレーテストなインターコンチネンタルチャンピオン」とも呼ばれていました。その王座を失ったのが対ウォリアー戦の秒殺劇だったわけですが。
技らしい技はスリーパーホールドくらいしかないのですが、それで試合を組み立てられるのがすごい。今でこそホンキーの巧さが分かりますが、当時は本当にしょうもないレスラーだと思っていました。
実はジェリー“ザ・キング”ローラーのいとこだったりします。


○ローデス(ジミー・ハートのギターショット誤爆→エルボードロップからピンフォール)ホンキー×


コスプレで持ち込む小道具のギターは凶器になるわけですが、今回はそれで自分がやられてしまいました。この間抜けっぷりこそがホンキーの魅力。私はバカヒールが大好きです。



ガマニアックス(ハルク・ホーガン&ブルータス・ビーフケーキ) w/z エリザベス vs “マッチョキング”ランディ・サベージ&ゼウス w/z センセーショナル・シェリ

ブルータス・ビーフケーキ。ホーガンの弟とも名乗っていた時期がありましたが、実際には幼馴染だったそうです。本名「エドレスリー」。エド・はるみとは無関係です。24時間テレビのマラソン前の演説は感動的でしたね。何の話だ。
プロレス入りもホーガンの影響を受けてのものですし、ずっとホーガンの後を追って団体を渡り歩いていました。
ホーガンの七光りかというと、はっきり言ってその通りで、特徴のない地味なレスラーでしたが、グレッグ・バレンタインとのタッグではそれなりに高い評価を受けていました。
この試合の当時は“バーバー”つまり床屋を名乗っていました。インタビュー時に手に持っているハサミは床屋のイメージです。「レッスルマニアIII」では、ロディ・パイパー vs アドリアンアドニス戦の終了後に入ってきてアドニスの髪を切っていましたが、その頃から既に床屋キャラだったのです。
1990年、パラセーリングの事故により顔面整形が必要なほどの大怪我をしました。復帰した頃にはそれを逆手にとって、フェイスプロテクターを装着して試合をし、うまく凶器に使っていたりもしていましたが、やはり後遺症があったようで、特筆すべき活躍は見られませんでした。
WCWではケビン・サリバン率いる「ダンジョン・オブ・ドゥーム」に入り「ゾディアック」を名乗ったこともありました。


ゼウスは…ただの俳優でしょう。ベアハグ以外の技が何もありません。「痛みを感じない怪人」というキャラクタではありましたが、唯一、目だけが弱点という設定でした。


試合の構図は「ホーガン&エリザベス対サベージ&シェリー」と「ホーガン対ゼウス」の二重構造。
サベージのマネージャだったエリザベスは、メガパワーズ解散後、ホーガン側に付きました(前週放送分の延長線上)。すると、サベージは新たに“センセーショナル”シェリーをマネージャに迎え、自身“マッチョキング”を名乗り、シェリーには“クイーン”を名乗らせました。その対立がここまで引っ張られたのですが、その後更に1年半も引っ張られることになります。


ゼウスはホーガンの主演映画「ゴールデン・ボンバー」の敵役でした。その映画の俳優が、どういうわけか現実のリングに上がってホーガンに挑戦したのです。
映画でのホーガンのリングネームが「サンダー・リップス」。何のことはない「ロッキー3」そのままです。決め技が「走り込んでのダブルアックスハンドル」という、あまりにもショボい技で脱力した覚えがあります。まあ、現実でもレッグドロップが決め技だったわけですが。話の種に見てみるのは構いませんが、はっきり言ってB級もいいところです。
解説・あらすじ ゴールデンボンバー - goo 映画


○ホーガン(凶器バッグによる殴打→ボディスラム→レッグドロップからピンフォール)ゼウス×


この試合では「レッスルマニアV」に続き、またもサベージの必殺エルボードロップを平然と返すという、サベージ全否定がなされています。いったい何を考えているのでしょうか?
試合後はホーガンがシェリーを暴行し、パンモロアトミックドロップを仕掛けました。女性虐待です。
しかも、直後にエリザベスが凶器バッグでシェリーを殴っています。今回は出てきませんでしたが、この後髪まで切られています。
シェリーのあまりの悲惨さにかえって同情してしまいました。そして、この試合を見た時からエリザベスがちょっとずつ嫌いになっていきました。
この試合は、日本人の感覚に合うとは思えません。どう見てもホーガンサイドの方が悪どい事をしています。それでも絶対的ヒーローのホーガンだからこそアメリカでは受け入れられたんでしょうね。